会社のカギが壊れると多大なる経済的損失が生まれてしまう

僕の兄は大阪の大学に通っていましたが、卒業後、実家のあるこの静岡に帰ってきました。いわゆる「Uターン就職」というヤツで、本人曰くは「下宿の家賃代も浮くし、別にいいだろ」とぶっきらぼうに話していましたが、おそらくは段々と年老いていく父や母が心配で、実家に帰ってきてくれたんだろうなと僕は思っています。昔から兄にはかなり不器用なところがあり、今回のように「表面的には不愛想」ながらも、その行動は他人を思ってのことが多いのです。

さて、このように僕の兄弟は実家に戻って、地元企業に就職しましたが、前述の不器用な性格が祟ってか、最初は色々な苦労をしたようです。

例えば、事務職で採用されたにも関わらず、「人当りの良さ」が求められる外回りの営業に回されてしまったりとか、なかなかハードな経験を積み重ねた様子でした。
ある時など、担当でも無いのにある支店のカギを預けられてしまい、一週間ほど早起きして一番に会社に行かざるを得ない状況に陥ってしまったことがあります。

しかし兄は、「カギをなくしても、またもしも壊してしまったとしても、そうなってしまうと会社に多大な経済的損失が生まれてしまう。俺はそんな迷惑はかけたくない」と、毎朝5時に起きて預かった支店のカギを開けていました。
こんな兄を持ち、弟として僕は嬉しく思うのと同時に、「もう少し気が抜ければいいのに」と、本人の体調を心配してしまうのでした。