すべて同じ暗証番号にしていませんか?

「そんなこと、私が知ってどうしろと?」と思った話である。

短大時代に同じクラスになった子と友達になった。私は男子からはさっぱりだけど、女子からは結構モテるので、私と友達になりたい子はたくさんいたのだが、その子は独占欲が強いらしく、私と二人で行動するのを好み、私が他の友達と行動するのを嫌った。私は女同士のイザコザはあまり好きではないタイプなので、彼女とは少し距離を置くことにした。

ところが彼女は私のその行動が気に食わなかったようで、私のありもしないウワサ話をあちこちに流すようになった。放っておこうかとも思ったけれど、私も彼女に対しては相当腹に据えかねるものがあったので、直接話をすることにした。すると彼女はごめんなさい、ごめんなさいと、泣き喚きだした。短大の正面玄関前、生徒たちが多く出入りするその場所のその光景は、私が彼女をいじめていると周囲から認識されるのに十分な説得力があった。それ以来、私は肩身の狭い思いで短大時代を過ごすことになったのである。それでも私のクラスの同級生たちは、彼女の異常さに気づき、私の味方でいてくれたので、何とか平穏に過ごせたのだけれども…。

それ以来彼女とはつかず離れずの微妙な距離感を保っていたのだけど、ある日彼女と帰り道にバッタリ出くわし、一緒に帰ることになった。何か口実をつけて引き返そうかと考えていると、彼女が突然、「私の銀行口座の暗証番号って、○○○○なの」と突然言い出した。「えぇ!?」と私が驚いていると、「他の色んな暗証番号も全部一緒だから」と言って、さらに続けた。「もし私の暗証番号を使って悪いことをする人がいたら、まっさきにあなたが疑われるね」と、「ディズニーシーよりランドの方がいいよね」みたいなテンションで楽しそうに言ったのだ。背筋が冷たくなるのを感じながら、「せめて暗証番号は全部変えたら?」という見当違いのツッコミをしたのだった…。